2008.07.09 No.001号 貴州暴動から見た中国危機の到来
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2008.07.09 No.001号
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~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~
石平(せきへい)のチャイナウォッチ
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貴州暴動から見た中国危機の到来
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今年の6月1日、中国の駐日大使である崔天凱氏はテレビ朝日の「サンデープロジェクト」に生出演したなかで、こう述べたことがある。
「中国は開放政策から30年が経過したことで様々な変化を遂げてきており、いままでになかったようなことが起きている。今後、予測不可能なもっと激しい変化が起こり、多くの困難や問題に直面する可能性がある」と崔大使が言う。中国の全権大使たる立場にある人間は、それほど深刻な表現を用いて中国が直面している問題の重大さを率直に「告白」したことに、私は少しの衝撃さえ受けている。それは、今後の中国問題を考える上では大変興味の深いものであるとも思っているのである。
というのも、中国の高官の1人である彼は、テレビ番組という公の場合において、これからの中国で「予測不可能な激変が起こりうる」、という不気味な警告を発しているからである。そして、それからわずか一が月も経たないうちに、彼の警告した「激変」を予兆するような事件が現実に起きたのである。6月28日に、中国貴州省の甕安(おうあん)県という町で大規模な暴動事件が起きた。それは日本のマスコミでも大きく報道されているが、ある女子中学生が殺された強姦殺人事件の捜査に不満を持った住民数万人が警察本部などを占拠、建物や警察車両に放火するなどの騒ぎとなった、という経緯である。
実はその時に襲撃されたのは、何も県の警察本部(公安局)だけではない。7月1日に行われた貴州省公安庁の公式発表によると、甕安県共産党委員会のオフィスビルと県政府のオフィスビルの両方とも焼き討ちの対象となったという。約7時間にわたる暴動の中で、共産党委員会ビルは丸ごと全焼、県政府ビルは104室の部屋が焼かれたわけである。
つまり、一件の刑事事件の捜査に不満をもった数万人の市民たちは、その憤りをそのまま地元の党と政府にむけて爆発させ、党と政府そのものにたいする反乱を行ったわけである。しかもそれは、抗議デモやハンストなどの「穏やかな」形での反抗ではなく、いきなりの焼き討ちとなるのである。
勿論その場合、女子中学生殺害事件の捜査への不満は単なる暴動発生の導火線であるにすぎない。数万人の民衆の一斉の爆発の背後にあったのは、より大きな社会的歪みと不正にたいする憤懣と絶望であろう。そして民衆たちは、地元の党と政府こそがこうした歪みと不正を生み出した根源であると思っているのに違いない。だからこそ、彼らは何の躊躇いもなく、この地方における最高権威の象徴であり権力の中枢でもある党と政府のビルに押し寄せて、容赦のない焼き討ちを実行したわけである。
甕安県での暴動は一人の少女の殺害に起因した個別事件であるとはいえるが、党と政府にたいする民衆の憤懣と絶望はけっして個別的な現象ではない。甕安暴動発生のわずか5日後、河南省張家界市永定区の西渓坪という町内にある政府出張所のビルに、ガスタンクを積み込んだ農業用三輪車が突入して、そのまま爆発炎上した事件が起きた。12人の負傷者を出したこの事件の犯人は同じ町内に住む住民の一人である。反抗の動機は未だに不明のようだが、地元政府にたいする一住民の「テロ行為」であったことは確実である。「民衆の政府に対する決死の反乱」という構図がここにも見られたのである。
要するに、今の中国ではさまざまな社会的歪みから生じた民衆の不満と憤懣が至るところで蓄積されて蔓延している状況であるが、それらの不満と憤慨は、常に中国共産党政権そのものに矛先を向けて暴発してくる危険性を潜めているのである。それはもはや、「革命前夜」のような状況であろうと言えなくもないが、問題はこれからである。
このサイトで掲載している私の別の論文でも明らかにされているように、今までは中国社会の安定維持の柱の一つとなってきた経済の高度成長と「繁栄」は今年から、バブルの崩壊によって破綻していく見通しである。そうすると、社会的矛盾と不安の拡大はもはや避けられないすう勢であるが、その行き先にあるのは、もはや本格的な危機の到来でしかない。
まさに前述の崔大使が述べたように、中国これからはいよいよ、「激変」の時代を迎えようとしているのである。
