2008.08.26 No.005号 自らの首を絞めた中国の歪(いびつ)な経済成長戦略
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2008.08.26 No.005号
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~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~
石平(せきへい)のチャイナウォッチ
http://www.seki-hei.com
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自らの首を絞めた中国の歪(いびつ)な経済成長戦略
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【対外輸出に依存しすぎた中国経済成長の歪(いびつ)さ】
8月4日に発信した「石平のチャイナウォッチ」は、
「メード・イン・チャイナの直面する生存危機」
というタイトルで、
中国の輸出向け製造業の直面する
難局に関する分析を行ったが、
実は「メード・イン・チャイナの生存危機」の
背後に見え隠れているのは、
中国経済の抱えるもう一つの巨大なる矛盾である。
それはすなわち、
対外輸出に依存しすぎた中国経済成長の歪(いびつ)さである。
今までの十年間、
経済全体の成長率はたいてい10%程度であったのに対して、
対外輸出の伸び率は年々25%から30%までであった。
輸出拡大を頼りにして経済成長を
長期間にわたってやってきた結果、
今の中国経済の対外依存度はすでに
60%に達していることが
最近の国家統計局の発表によって判明されているが、
海外市場への輸出と、
海外からの原材料やエネルギー資源の調達をなくしては、
中国経済はもはや成り立たない状況となっている。
ちなみに、1980年から2001年までの間、
米、日本、インド、ドイツの対外貿易依存度は
14%から20%の間で推移している、という統計もあるが、
それらの先進国と比べれば、
中国経済の対外依存度の高さはいかに
異常なものであるかがよく分かる。
しかし今や、
このような過度な対外依存の経済成長の体質が
逆に、中国経済の首を絞めるようになったのである。
まず、
「安売」の中国製品の最大の輸出先である
アメリカの経済が衰退期に入ると、
それが直ちに中国の輸出業にたいする大きな打撃と
なったことはいうまでもない。
いわゆる「メード・イン・チャイナの危機」は
ここから発生してきたものである。
【世界的資源不足の中で】
その反面、
「メード・イン・チャイナ」の大量生産を
維持するのには海外からの
エネルギー資源・原材料の輸入が不可欠である。
たとえば今でも、
中国国内の経済活動でその消耗する
石油の50%近くと鉄鉱石の50%以上は
海外からの調達に依存している。
しかし、
まさに中国の国内需要の拡大が原因の一つとなって、
世界中の石油や鉄鉱石などの資源・原材料は
ことごとく品不足となって価格が暴騰した。
今度はそれが逆に「メード・イン・チャイナ」の
コストを上昇させることによって、
輸出不振で苦しんでいるところの
中国国内の輸出産業をさらに苦しめる結果となっている。
言ってみれば、
輸出の拡大を頼りにしてきた中国の経済成長戦略は、
世界的資源不足を作り出すことによって、
逆に中国の経済成長の障害を作り出したわけである。
【もう一つの致命的経済問題 インフレ】
輸出拡大頼りの成長路線は、
実はもう一つの致命的経済問題を作り出すのにも
多いに「貢献」している。
それはすなわち、
中国経済の命取りとなるかもしれない
インフレの亢進(こうしん)である。
中国経済は今、
異常なインフレの亢進に苦しまれていることは周知の通りだ。
2007年後半から上昇し続けてきたCPI指数は、
2008年に入ると8%台に上がった。
2008年2月には8.7%にも達して、
1996年6月以来の高い数字の更新である。
そして、
2008年前半期のCPI数値は毎月平均にして
8.1%の高台に留まり、
4.8%という政府設定の数値目標を
大きく上回った結果となっている。
それはもはや、
全面的なインフレの亢進というしかない
深刻な状況なのである。
このような状況を作り出してきた一因には、
やはり輸出の継続的拡大がある。
今まで年々、輸出をむやみに拡大させてきた結果、
輸出の対価としての外貨は当然大量に入ってくるわけである。
しかし中国の場合、
外貨が人民元と直接に交換できないため、
輸出企業の稼いだ外貨はそれらの企業の手元に入るわけはない。
それは全部、
中国中央銀行の外貨準備高となって
中国政府の管理下になるのである。
だからこそ、
中国の外貨準備高が今や世界一となっているのだが、
当の中国政府は別にそれで喜んでいるわけでもない。
というのも、
輸出の稼いだ外貨が政府の手元に止まったその代わりに、
中国政府はそれに相当する額の人民元を発行して
輸出企業に支払わなければならないからである。
国家が企業に支払った分の人民元は
当然国内流通となるわけだから、
そこから一つ大きな問題が生じてくるのである。
企業が外貨を稼ぐための製品の輸出を行った場合、
製品自体は当然輸出品として海外へ出て行った。
その代わりに、稼いだ外貨と同額の人民元だけは
政府から企業の手に渡されて国内流通となる。
それはどういうことなのかいうと要するに、
モノとしての商品が海外に出た代わりに、
それらのモノの価値の符号としての人民元だけは
国内に止まって流通するのだ。
その結果、中国国内においては、
モノよりも人民元の方が多くなって流通することになってしまう。
【30年間も蓄積してきた「流動過剰」】
このような現象はすなわち経済学でいう「流動過剰」であるが、
物価の上昇の面からみれば、
「流動過剰」の拡大はすなわちインフレそのものなのである。
したがって、
今や中国経済の抱える最大の難題となったインフレの亢進は実は、
今までの30年間にわたって
中国政府の進めてきた輸出拡大頼りの
成長戦略がもたらした必然の結果なのである。
しかもそれは、
30年間も蓄積してきた「流動過剰」の結果であるから、
たとえ今後輸出自体が鈍化してしまった場合でも、
インフレは収まることはまずない。
30年間の「負債」は、
これから返却していかなければならないからである。
だとすれば、
今後において輸出拡大の成長路線が
挫折して経済成長自体が失速していくなかで、
インフレだけがそのまま亢進していくという
「スタグフレーション」の悪夢の到来は、
もはや避けられそうもない。
すべては、
中国の歪な経済成長路線のもたらした当然の悪果である。
( 石 平 )
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