中国の地方行政のしくみ
中国の地方行政は、一言でいえば中央集権制下の地方行政である。
つまり、地方行政は国家行政の一部分となり、地方政府は中央政府の指揮監督に服する、というしくみであり、「地方自治」の考え方も実体も存在していない。
このしくみのなかで、中央政府は上から下へと、地方行政を主に三つのレベルに分けて直接にあるいは間接的に統治している。
中央の下にはまず省・自治区・直轄市の行政レベルがある。行政区画としてちょうど日本の都道府県にあたるもので、現在の中国本土は二七の省・自治区と四つの直轄市に分けられている。この行政レベルの行政トップである省長・自治区主席および直轄市市長と、政治的最高責任者である党委員会の書記は、それぞれ中央政府と党中央委員会より任命されることになっている。したがって、彼らは中央政府と党中央の直接指導下で行政を行ない、実質上の任命権を持つ中央政府と党中央に対してのみ責任を負うのである。
省・自治区の下は、市・県の行政レベルである。実際には、省・自治区と市・県のあいだに「地区」という区画も存在しているが、行政上ではそれほど重要ではない。「県」と「市」こそが、実体を持つ基礎的な行政区画である。県・市レベルの行政に対して、党中央と中央政府から権力を賦与される省・自治区党委員会・政府は、実質的な任命権と指揮権を持つのである。
この行政レベルでとくに重要なのは県である。全国で二〇〇〇以上もある県は、英語ではcountryと訳されているが、中国国民の大半はそれらの県に住んでいる。
県の下には郷と鎮がある。「郷」はすなわち県がその管轄下に置く農村部の末端行政区画単位である。そして、郷政府の所在地や農村のなかで比較的に工商業が発達している町が「鎮」となるのである。そして郷政府と鎮政府は、中国における地方行政の最下級レベルであり、国家権力の末端組織である。郷・鎮レベルの党委員会書記と行政トップも、当然上の県レベルから任命されることになっている。
このように、中国における地方行政は、中央から末端までの一方的な権カ賦与を通して、中央政府を頂点とする全国統一的な命令系統のなかに組み込まれているのである。
他方、広大な国土を持つ中国では、中央が地方の特性を無視してすべてをコントロール下に置くことは不可能であるから、地方に、ある程度の自主性を認めざるをえない。とくに近年では、地方が改革・開放政策によって培ってきた経済的実力を基盤に自立化を強める傾向も見られている。また、郷政府が管轄する農村地域の村では、選挙による村民自治もすでに実現しており、このような動きがさらに郷・鎮レベルにまで拡大していくことも不可能ではない。
秦の始皇帝による郡県制の確立以来、中国で延々と受け継がれてきた中央集権的行政システムは、ようやく変貌する方向へと向かおうとしているのである。
