中国の政治制度
中国の政治制度の特質を表すキーワードの一つが「民主集中制」である。
それはもともとレーニンが共産党の組織原則として提起したものであるが、中国においては共産党と国家機構の制度づくりに適用されている。
党の場合、現行の党規約が民主集中制について次のように規定している。◆党員は党組織に服従する。少数は多数に服従し、下級は上級に服従する。◆党の指導機構は、一部を除いてすべて選挙で選ぶ。◆党の最高指導機関は、全国代表大会と中央委員会である。
こうした原則に基づいて、中国共産党は下記のような政治制度を作り上げている。
まず党の最高指導機関として中国共産党全国代表大会を五年ごとに開催する。党大会は今後五年間の活動方針を決定し、中央委員会を選出する。全国代表大会の閉会中には、中央委員会が全国代表大会の決議を執行し、党の全活動を指導する。
中央委員会はさらにその全体会議を開き、中央政治局・中央政治局常務委員会・中央委員会総書記を選出する。そして中央委員会全体会議の閉会申は、中央政治局とその常務委員会が中央委員会の職権を行使するのである。
このように、全国代表大会と中央委員会全体会議は「民主」原則に基づいて運営される一方、政治局とその常務委員会が「集中」の原則に基づいて活動するのである。それは、中国共産党における民主集中制のしかるべきあり方とされている。
しかし実際は、「党員は党組織に服従し、下級は上級に服従する」という第一の原則のもとで、選挙制度自体も形骸化しているから、結局、党の全国代表大会が中央委員会にしたがい、中央委員会が政治局にしたがうという、下からの服従だけが求められる構図ができあがり、民主集中制は単なる「集中制」となっている様相である。
国家機構における民主集中制に関しては、「最高の国家権カ機構」である全国人民代表大会(一一七ぺージの解説「人民代表大会のしくみ」参照)の開催は「民主」原則の実現とされているのに対し、国務院が「最高の国家権力機関の執行機関」として、「集中」の原則に基づいて国家の行政を司っている。
国務院は中国の中央人民政府であり、最高の国家行政機関である。日本の内閣に相当する。国務院のトップは総理であるが、その補佐役として数名の副総理と国務委員が置かれる。国務院の下には二九の部・委員会(日本の中央省庁にあたる)が置かれ、各分野ごとに国家行政を司っている。本書にも出ている国家発展計画委員会、労働・社会保障部、農業部などがそれである。各部・委員会のトツプである部長・主任はすなわち日本の国務大臣にあたる職務である。また、中国最大の通信社である新華通信社や、最高アカデミーの中国科学院も国務院の直属機構である。
国務院と全国人民代表大会との関係は、国務院が全国人民代表大会に対して責任を負い、活動を報告すると規定されている。しかし実質上、国務院は中国共産党の指導下での国家行政機関であり、まず党に対して責任を負い、党中央の指導を受ける立場である。
中国の政治制度を構成するもう一つの要素は、「共産党指導下の多党合作制」である。中国共産党の他に、さらに八つの民主諸党派が存在していて「多党」を構成しているが、それらの諸党派は当然「野党」としてではなく、むしろ共産党の指導下の「参政党」として活動している。一方、共産党は常に彼らの意見に耳を傾け、彼らの提言や助言を集約して国政に反映させなければならないとされている。そのために、共産党が民主諸党派と定期的に一堂に会して政治を討議する場が、すなわち各級の政治協商会議であるが、こうした「多党合作制」においてもやはり民主集中制の原則が貫かれている。
こうして、国家全体においては権力が共産党に集中し、党内においては権力が党中央(政治局)に集中していくというのが、いわば民主集中制の実態であり、中国における政治制度の基本構造でもあるのである。
